余った車のスピーカーを3Dプリンターで復活させた話
子どもが英検の勉強でCDを聴きたいと言い出した。古いコンポを引っ張り出したらスピーカーが壊れていた。ちょうど車で使っていた10cmスピーカーが余っていて、「捨てるのはもったいないな」と思った。それが今回の自作スピーカーのきっかけだった。
やってみた理由
きっかけは3つ重なったこと。
- 子どもの英検勉強にスピーカーが必要だった — CDを聴きたいのにコンポのスピーカーが壊れていた
- 車の10cmスピーカーが余っていた — carrozzeria TS-F1010。車載用だけど物自体は良い
- 3Dプリンターがあった — Bambu Lab A1を持っているので、箱を自分で作れるのでは?と思った
リサイクルショップも見に行ったが、3,000円程度のスピーカーでも状態が悪く、破れや損傷が目立つものばかり。「それなら自分で作った方がいいな」という判断になった。
最初は木材で箱を作ることも考えたが、準備や片付けの手間を考えると進まない。3Dプリンターなら設計→出力→調整の高速ループで試行錯誤ができる。これがAI時代のものづくりの本質だと思う。
やったこと
使った機材
| 部品 | 型番・素材 |
|---|---|
| スピーカーユニット | carrozzeria TS-F1010(10cm同軸2ウェイ、4Ω) |
| アンプ | Fosi Audio BT10A(Bluetooth/AUX対応) |
| エンクロージャー | PLA(Bambu Lab A1で出力) |
| フィラメント | eSUN PLA+(コールドホワイト) |
設計の考え方
TS-F1010は車載用の同軸スピーカー。中央にツイーター(高音用)が内蔵されていて、定位感が良いのが特徴。ただし車載用なので箱の設計データ(T/Sパラメータ)が公開されておらず、経験則と試作で詰めていく必要があった。
AIチャットで音響設計を相談しながら、以下の方針を決めた。
- 方式:バスレフ型(ポートで低音を補強)
- 目標内容積:約3.0L
- チューニング周波数(fb):約80Hz(机上で自然に聴こえるバランス)
- デザイン:黄金比(1:1.618)をベースにした縦長プロポーション

初代:スロットポート版
最初に作ったのは、前面下部にスロット型ポート(横長の開口部)を設けたデザイン。内部でL字に折り返して有効長を稼ぐ構造にした。


スロットポートの設計値:
- 開口サイズ:100mm × 20mm
- 有効長:約220mm(L字折り返し)
鳴らしてみると音は出たが、低音のバランスに改善の余地があった。
二代目:曲線ダクト版
次に挑戦したのが、内部に大きな曲線ダクトを持つ構造。直角の折り返しではなく滑らかなカーブで空気を導くことで、風切り音を減らし効率を上げる狙い。

3Dプリンターだからこそできる自由な形状。これは木工では難しい。
最終版:円筒ポート版
試行錯誤の結果、シンプルな円筒ポートに落ち着いた。構造をシンプルにすることで気密性の確保がしやすく、音の安定性も増した。

最終設計:
- 外寸:約120mm × 194mm × 150mm(黄金比ベース)
- ポート:φ30mm × 90mm(前面下部)
- 壁厚:3〜4mm + 内部リブ補強
- インフィル:20〜30%(ジロイド)
- 背面:バナナ端子対応のスピーカーターミナル装備

結果
PCデスクの左右にセットして完成。白いPLAの筐体がモニター周りに自然に馴染んだ。

Fosi Audio BT10AのBluetooth接続で、PCからもスマホからも手軽に音を飛ばせる。子どもの英検CDも、自分の作業BGMも、これ1台でカバーできるようになった。
音の印象は「モニタースピーカー的な自然さ」。低音を無理に盛らず、ボーカルやアコースティック楽器がくっきり前に出る。長時間聴いても疲れにくい。
うまくいった点
- 3Dプリンターの高速試作が活きた — 初代→二代目→最終版と3回設計を変えられた。木工なら1回作って終わりだったと思う
- AIチャットとの設計相談が有効だった — バスレフの理論(有効長・断面積・チューニング周波数)をゼロから学ぶのは大変だが、AIに聞きながら設計値を詰められた
- 黄金比デザインの効果 — 見た目の「しっくりくる感」が段違い。既製品っぽい仕上がりになった
- 余り物の有効活用 — 車のスピーカーもフィラメントの残りも、捨てずに価値に変わった
失敗・課題
- 初代のスロットポートは設計が複雑すぎた — 有効長の確保に苦労し、気密性の確保も難しかった
- PLAの共振 — 音量を上げると箱が微妙に震える。壁厚を増やすか、ABSやPETGへの変更を検討中
- 車載用スピーカーの制約 — T/Sパラメータが非公開なので、箱の設計が手探りになる。ホームオーディオ用ユニットならシミュレーションで最適解を出せる
- 吸音材の量の調整 — 入れすぎるとバスレフ効果が減衰し、足りないと中高音が濁る。ここは耳で追い込む必要がある
再挑戦するなら
- 吸音材の最適化 — フェルトの量と配置を微調整して音質を追い込みたい
- ポート長の微調整 — 現状の90mmから±5〜10mmで低音のバランスを詰める余地がある
- PETG素材での出力 — PLAより耐熱性・耐振動性が高いので、音質改善が期待できる
- 2号機の設計 — 今回の経験を活かして、ホームオーディオ用ユニット(8Ω)での本格版を作ってみたい
この実験で使った機材 【PR】
- Bambu Lab 3Dプリンター「A1」(AMS Liteなし) — 高速で精度の高い造形ができるFDMプリンター。エンクロージャーの試作に最適
- eSUN PLA+ フィラメント(コールドホワイト) — 通常PLAより強度が高く、スピーカー筐体にも使える