「考えが消えていく」── Obsidian × AI で自分の脳を組み直すことにした話
朝起きたときに「今日はあのアイデアを進めよう」と思っていたはずなのに、夕方には何だったか思い出せない。通勤中に音声でAIと話していると、また別の発想が出てきて、そっちに引っ張られる。家に帰って一段落したころには、朝のアイデアも昼の発想も、両方とも輪郭がぼやけている。
最近、こういう感覚が増えてきた。
AIで出来ることは確かに増えた。ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot、Grok。試したサービスを並べると数えきれない。RTX 5090でローカルLLMも動くようになった。3Dプリンタも、ComfyUIも、OCR→TTSパイプラインも、AIに手伝ってもらえば一人で組める。
でも同時に、考えることも増えた。そして増えた思考の半分は、たぶん前にも考えたことだ。「またこの話、前にも考えたな」と気づくたびに、ちょっとしんどい。
この記事は、その「同じ場所をぐるぐる回っている感覚」を何とかしたくて、ObsidianとAIで自分の脳を組み直すシリーズの第1弾。全8回で書いていく予定。今回は「なぜこの環境を作るのか」の話に絞る。
やってみた理由
実は、メモは前から残していた
ObsidianやNotionの存在は、AIが話題になる前から知っていた。AIが来る前から、自分の考えをできるだけメモに残そうとはしていた。
ただ、残したら残しただけで、その後の整理がずっとできていなかった。気づいたら、メモは溜まっているけど、必要なときに引き出せない状態になっていた。
そこにAIが加わって、思考の流量が一気に増えた。整理が追いつかなくなる速度が、目に見えて速くなった。
困っていたこと
整理してみると、自分が困っていたのは大きく4つだった。
1) 思考の揮発 書き残さなかったアイデアは、ほぼ確実に消える。AIと話したときの「ハッ」とした気づきも、画面を閉じた瞬間に半分以上消えている。
2) 思考の重複 過去に考えたはずのことを、また一から考えている。「これ前にもやった気がする」が頻発する。でも、どこに残したかが思い出せない。
3) 会話資産の埋没 ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot、Grok。会話がそれぞれのアプリの中に散らばっていて、横断検索ができない。後で参照したい一節があっても、どのサービスで話したのか思い出すところからになる。
4) 乗り換えの怖さ 今はClaudeを主に使っている。でも1年後はわからない。性能が逆転するかもしれないし、料金が変わるかもしれない。乗り換えるたびに過去の会話を全部失っているのは、もう嫌だった。
ツールが増えるほど、整理が必要になる。AIの場合は「会話 = 思考そのもの」みたいな側面があるから、整理されないまま積み上がると、過去の自分が見えなくなる。これが一番きつかった。
AIで作りたいはあるけど、それが先じゃない
ここは正直に書いておきたい。
AIでいろいろ作りたい気持ちは確かにある。ただ、自分の場合はAIが先にあったわけじゃない。AIが出てくる前から、何かを作りたい、何かをしたい気持ちがずっとあった。
前職は自動車整備士だった。整備士になった理由は「カスタムに興味があった」というよりは、自分だけの車に仕上げたい、自分でメンテナンスをして自分のものとして突き詰めたい気持ちが大きかった。
いや、それも違うかもしれない。整備士になったのは何だったんだろう、と今でも自分でうまく言葉にできない。車が好き、整備が好き、治すのも好き。常に何かをしたい気持ちが、ずっとある。それだけは確かだ。
ObsidianとAIで脳を組み直す作業は、整備工場で工具箱を組むのと似ている気がしている。自分の手に馴染ませて、自分の手順で組まないと意味がない。扱う対象が「車」から「思考」に変わっただけで、やっていることはあまり変わっていないのかもしれない。
やったこと
ここからは「ObsidianとAIを組むために、自分が決めた4つのこと」を書く。
1. Obsidianを中心に据えた
困りごとを解決する場所として、Obsidianを選んだ。
理由はだいたいこんな感じ。
- ローカルMarkdownだから消えない — Obsidian社が潰れてもファイルは自分のディスクに残る
- 特定のAIに依存しない — どのAIからでも読み書きできる
- 検索が早い — 全文検索 + タグ + リンクが標準
- 乗り換えやすい — 他のツールに移したくなったら .md ファイルを持ち出すだけ
決定打は最後の「乗り換えやすさ」だった。
世の中のObsidian記事はNotionとの比較で語られることが多い。クラウドで完結するNotionは便利だけど、自分の中に積み上げてきた思考を他社のデータベースの中に閉じ込めておくことに、自分は耐えられなくなってきていた。
ローカルMarkdownという形式は、いまAI業界が荒れていることへの保険でもある。
2. Claude Codeを「今」選んだ
主に使うAIとして、Claude Code(AnthropicのCLIエージェント)を選んでいる。
選んだ理由は3つ。
- CLAUDE.mdがプロジェクト全体に効く — フォルダごとに振る舞いをファイル1つで定義できる
- ターミナルで動く — Vaultのフォルダに直接読み書きできる
- ファイル操作が前提 — エディタの中で完結せず、Vault全体を読みに行ける
ただし「Claudeをずっと使い続ける」とは決めていない。
これは消極的な意味ではなく、設計の前提として書いている。AI業界はまだ動くし、半年後・1年後にもっと良いツールが出る可能性は十分ある。乗り換え可能な状態を維持しながら、今の最適解を使う。
これが、Obsidianを中心に据えた最大の理由でもある。Vaultがローカルの中立な脳の置き場所として機能していれば、AI側はいつでも差し替えられる。
3. ローカルLLMとクラウドLLM、両方使うことにした
もう一つ大きく悩んだのが、ローカルLLMとクラウドLLM、どちらを軸にするか。
結論から言うと、どちらか一方には絞れなかった。
ローカルに寄せたい理由
一番大きいのは月々のコスト。RTX 5090を買ったのも、サブスクリプションだけに払い続けるのではなく、自分の機材で完結させたい気持ちがあったから。
もう一つは処理を分散させたい気持ち。今のRTX 5090は1枚だけなので、何か一つの処理を走らせると、ほかの処理をする余裕がなくなる。画像生成を回している間は、ローカルLLMで分析を回す、ということができない。手待ちの時間が出てしまう。
なので、片方をローカルで走らせている間にもう片方をクラウドに投げる、という分け方が自然と必要になってくる。どちらか一方に絞りたい気持ちはあるけど、機材の都合でいまは絞り切れない。
でも、クラウドも手放せない
クラウドAIが楽なのは、どこでも使えるところ。出先で調べものをするときは、iPhoneで動くアプリのほうがどう考えても速い。
会話の用途は、テキストと音声で分けて考えている。テキストで腰を据えて話すならClaudeが手に馴染む。一方、通勤中の音声対話だとChatGPTのほうが圧倒的に自然で、ここはまだChatGPTを置き換える選択肢が見つからない。
用途別の現在地
| 用途 | クラウド | ローカル |
|---|---|---|
| 画像生成 | 汎用ならChatGPT / Nano Banana | 作り込みは気軽にトライアンドエラー |
| 分析 | 専門的なもの | 専門的でなければローカルで十分 |
| コード生成 | 今はClaude Codeが主 | ローカルでも行ける場面が増えてきた |
| テキスト会話 | Claudeが手に馴染む | 用途を絞ればローカルでも行ける |
| 音声会話 | ChatGPTが圧倒的に自然 | 現状は向かない |
プライバシーは決定打ではない
「ローカルLLM = プライバシー」という話もあるが、自分の場合、プライバシーは決定打ではなかった。どこまで気にすればいいかわからない、というのが本音。個人に確実につながる内容は避けているけど、それ以上の線引きはあいまいにしている。
今のところの結論
ローカルとクラウドは一長一短で、どちらか一方には絞れない。今は両方を使い分けている。
サブスクリプションが値上がりして月額が馬鹿らしくなってきたら、ローカルにもっと比重を寄せていくつもりだ。具体的な役割分担は、第6弾「RTX 5090 × Claude Code ハイブリッド」で書く。
4. 自分の道具として組み直す
これは技術的な決定というより、運用の話。
Obsidian Vaultは、整備工場の工具箱と同じだ。借り物では仕事にならない。自分の手に馴染ませて、自分の手順で組まないと意味がない。
具体的にやっていることは3つ。
- CLAUDE.mdでルールを明文化 — AIの振る舞いを自分の手で定義する
- Decision Recordを残す — なぜその選択をしたかを未来の自分に残す
- 人間が書く領域とAIが出力する領域を分ける — フォルダ単位で混ぜない
どれも、自分の手で組み直せる工具として扱っている。テンプレートに当てはめるのではなく、運用しながら直していく。
結果 ── このシリーズで作るもの
8回シリーズで、自分の脳の組み直しを設計と運用の両面から書いていく。
特に第6弾の「RTX 5090 × Claude Code ハイブリッド」は、調べた限り日本語圏でも英語圏でも、同じ構成を体系的に書いた記事は見つからなかった。ここは自分が書いて埋めにいく場所だと思っている。
全体を貫く設計の考えは1つだけ。
過去の自分を埋もれさせず、いつでも呼び戻せる状態にしておく。これだけ。
うまくいった点
本格的に運用を始めて1ヶ月くらいの所感。
- 「同じことをまた考えている」感覚が減った:Vaultを検索する習慣がつくと、過去の自分とすぐ会える
- AIを乗り換えても怖くなくなった:ノートはローカルMarkdownに残っているから、AI側はいつ差し替えても困らない
- CLAUDE.mdとDecision Recordを書く作業そのものが楽しい:整備士時代の工具箱整理と同じ感触がある
- ブログのネタがVaultから自然に出てくる:この記事自体、Vault内のセッションログと判断記録を素材に書いている
失敗・課題
率直に書く。
- シリーズ8回は野心的すぎるかもしれない:全部書ききれるかは未知数。第1弾を公開してから第2弾を書くルールを自分に課す
- ハイブリッド構成の役割分担はまだ流動的:ローカルLLMの進化次第で、半年後には今の判断が古くなる可能性が高い
- マルチエージェント構成は着手したばかり:第7弾で本格展開予定だが、いま手元にあるのは試運転レベル
- 導入記事は世間にすでに山ほどある:差別化軸を「日本語圏 × RTX 5090 × ローカルLLM × ハイブリッド」に絞らないと埋もれる、と自分で言いながらまだ詰め切れていない
次にやること
- 第2弾「世界のObsidian × AI 現状マップ」を書く(本記事公開後に着手)
- Vault側のCLAUDE.md改訂(第3弾の材料になる)
- 各弾の公開後、記事自体をVaultに取り込んで次の分析素材にする(ループの実験)
- 第3弾着手のタイミングで、第1〜2弾が公開できているかをチェックする
締め
過去の自分を、ちゃんと呼び戻せるようにしておきたい。それだけのために、しばらくObsidianとAIを整え続ける。
この実験で使った機材 【PR】
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