世界の Obsidian × AI、どこまで進んでいるか調べてみた ── 自分の位置を確認するための現状マップ
第1弾を書き終えた直後、ふと不安が湧いた。
これ、世界はもうとっくにやっているんじゃないか。
第1弾では「過去の自分を埋もれさせず、いつでも呼び戻せる状態にしておく」と決めた。決めた瞬間は気持ちよかった。でも冷静になると、自分と同じことを考えている人が世界に何人いるのか、ろくに確認していなかった。
それなら、書き始める前に一度、世界を覗きに行こう。今回はその記録だ。
やってみた理由
後発で書くなら、世界の現状を知らないとたぶん意味がない。同じことを別の言葉で書き直しても、検索の上位は取れないし、すでに完成形を持っている人の劣化コピーになる。それだけは避けたかった。
整備士の頃の感覚で言うと、こうだ。工具箱を組み始める前に、同業者の工具箱を覗きに行く。みんなどんな道具を使っているのか。自分が手に入れようとしている道具は、もう棚に並んでいるのか。並んでいないなら、それは需要がないからなのか、それとも誰もまだ作っていないからなのか。
それを確かめたかった。
やったこと
日本語圏を覗いてみた
まず日本語圏。Zenn と Qiita を中心に、Hatena Blog やテックブログも一通り見て回った。
正直に書くと、Obsidian × AI の記事は、もう山ほどあった。へこんだ。
特に多かったのはこのあたり。
- Claude Desktop から Obsidian を操作する話。設定もトラブル対応も出尽くしていて、手順としてはほぼ完成形。
- プラグインの比較記事(Smart Connections や Copilot など)。2026年に入って量産されていて、後発で書いても埋もれる。
- 「Obsidian を AI で第二の脳に」系の汎用ガイド。企業ブログでも個人ブログでも繰り返し書かれている。ここはもう飽和している。
逆に、意外と少なかったのがこのあたり。
- RTX 5090 × ローカル LLM を実際に動かした記事。増えてはいるけど「単体で動かしてみた」止まりで、Vault と組み合わせたものは見つけられなかった。
- 三層構造や Decision Record を実運用に組み込んだ記事。汎用ガイドの中で名前は出ても、実際に回している人は日本語圏では見つからなかった。
ここまで読んで、はっきりした。汎用ガイドで後発に回っても、書く意味は薄い。
英語圏で進んでいるもの
英語圏に広げると、少し景色が違った。
目立っていたのは 複数のエージェントを並列で動かす実装事例。その中で、ある個人(Cameron Rohn さん)の記事を見つけた。Obsidian Vault のメンテナンスを、いくつかのエージェントに役割分担させて並列で走らせる構成を公開している。これが、自分が頭の中でぼんやり描いていたものに近かった。
ただ、誤解のないように書いておくと、「○○型」みたいな呼び方は本人が名乗っているわけじゃない。自分が整理のために勝手に呼んでいるだけだ(出典:cameronrohn.com)。
英語圏をまとめると、こうだ。マルチエージェントの事例は先行している。でも、自分の Vault に合わせて作り直した記録は少なく、日本語で体系的に解説した記事は、今のところほぼ見つからなかった。
飽和している場所と、空いている場所
ここまで調べて気づいた。飽和した領域を避けていくと、最後に手元に残るのは「自分にしか書けない構成」だけだった。
これは嬉しいような、こわいような話でもある。「空白領域」は「需要がない領域」と紙一重だから。誰も書いていないのは、書く価値がないからかもしれない。
それでも、書くと決めた。理由は単純で、自分が知りたかったから。半年前の自分が同じ場所に立っていたら、こういう記事を読みたかったから。需要があるかどうかは、書いてみないと分からない。
自分が陣取る場所
整理し終えて、シリーズの差別化軸を5つに絞った。
- 日本語圏で書く
- RTX 5090 を実機で使う
- ローカル LLM をクラウドと併用する
- Vault(Obsidian) を中心に据える
- クラウドとローカルの役割分担 を体系化する
図にすると、こういうことだ。
この5つが3つ以上重なっている発信者を、自分が見える範囲では見つけられなかった。全部を高い水準で書ける自信はまだない。でも、この交差点に立っている人が他にいないなら、自分が書く意味はある。そう思えた。
結果 ── このシリーズで何が書けるか
差別化軸が決まれば、第3弾以降は空白領域に並ぶ。ただ、第1弾を書いたあと、実際に組んでみて分かったことがある。計画通りに「立派な完成形」を見せる話より、「やってみて、つまずいて、あえて作らなかった」運用の記録のほうが、自分にしか書けない。だから第3弾以降はこう組み替えた。
| 回 | 役割 | 中身 |
|---|---|---|
| 第3弾 | Obsidian 環境構築 + CLAUDE.md 設計 | 三層構造の実装記録(正直まだ腑に落ちていない、も込みで) |
| 第4弾 | データ準備:AI 会話履歴 / リサーチ / 音声入力 | 783 件を取り込んだ実際 |
| 第5弾 | データ前処理:命名規則と Decision Record | Claude Code に書かせた処理スクリプトの実体 |
| 追加回 | 整える運用と想起 | 自動でつないだら、検証で自分の思い込みが覆った話 |
| 第6弾 | ローカル LLM で分類・分析は効率化するのか | RTX 5090 で実際に試して、数字で答える |
| 第7弾 | 窓口は 1 つ、エージェントは分ける | 「5 エージェントは過剰だった」から始まる話 |
| 第8弾 | ループ完結:発信 → 取込 → 分析 → 次の発信 | 運用の最終形 |
第1弾では「第6弾(ハイブリッド)と第7弾(5エージェント)だけは必ず書く、自分が立つ場所だから」と宣言した。でも実際に組んでみたら、5エージェントは自分には過剰で、ハイブリッドはまだ実験できていない。だからその宣言ごと、正直に書き直す。立派に完成させた自慢より、つまずいて組み替えた記録のほうが、たぶん読む価値がある。
うまくいった点
- 飽和領域に入る前に気づけた。書いてから「需要がなかった」と知るより、書く前に気づくほうが、ずっと楽だ。
- 自分のポジションが地図になった。5軸を1枚に書き出すと、迷ったときに戻ってこられる。
- 参照点が見つかった。完全に独りで試行錯誤するより、先に走っている人がいると分かるだけで、少し心強い。
失敗・課題
率直に書く。
- 英語圏の細部はまだ追えていない。半年後には、今のこの地図も古くなっているはずだ。
- リサーチに時間を使いすぎる。覗きに行ったまま戻ってこないと、本来の目的(自分の Vault を回すこと)が止まる。自分の計画倒れ癖は、こういうリサーチ段階で発動しやすい。
次にやること
- 第3弾「Obsidian 環境構築 + CLAUDE.md 設計」を書く。本記事で決めた差別化軸の、最初の出力になる。
- 第4弾に進む前に、第1〜3弾が公開できているか確認する。野心的なシリーズを並走させすぎないための、自分への歯止め。
締め
世界を一回り見てきた。自分が立つ場所は、たぶんあそこだ。
そう思えたなら、もう次に進める。